情報誌「TOMIC(とおみっく)」

63号 2021年1月発行(5/5)

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TOMIC第63号 新型コロナの影響とエネルギー・環境問題〜ポストコロナ時代に向けて加速する「3つのD」とは〜

新型コロナは壮大な社会実験、課題解決には長期の取組みを

小川崇臣氏

新型コロナの影響は、電力需要の減少や質的変化、原油需要の減少に加えて、エネルギーセクターへの投資減少に表れていることもあげられます。2020年のエネルギー部門への投資は、世界規模でみると前年比大幅減と予測されています(図5参照)。ただし、脱炭素関連技術への投資は、日本でも洋上風力を中心に再エネ事業に対する関心は継続しており、明確な投資意欲の減退は確認されていません。

図5 エネルギーセクターへの投資額の推移(2020年は予測)

新型コロナの感染拡大で傷ついた社会・経済を立て直す上で、今世界では「グリーン・リカバリー」という動きが関心を集めています。経済の再興を目指す過程で、脱炭素社会などの環境問題への対応も同時に行おうとする考え方です。欧州ではすでに政策として「グリーン・リカバリー」を進める方針を打ち出しており、さまざまな取組みも始まっています。日本ではまだ具体的な動きはありませんが、今後は各方面に広がっていく可能性があります。これまで述べてきたような変化や兆しは、コロナ禍で新たに発生した事象というよりも、以前から課題として認識されてきたものです。エネルギーの電化は進展し、分散型エネルギーシステムは普及拡大していくでしょうし、効率的なエネルギーマネジメントや、それを支えるデジタル技術の開発、スマートシティの実現なども進んでいくでしょう。新型コロナは、そうした以前からの取組みを加速するためのきっかけになったのだと思います。

エネルギーの課題解決には10年、20年と長いスパンが必要です。今回の新型コロナの感染拡大によるライフスタイル等の変化は、いわば壮大な社会実験ともいえます。これを社会がより良い方向へ向かうための変化にすることが重要だと考えます。
(取材日時:2020年10月19日)

 
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