情報誌「TOMIC(とおみっく)」

56号 2017年10月発行(3/4)

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TOMIC56号 日本経済の成長とエネルギー〜海外のエネルギー事例から考える日本の現状と未来〜

ヨーロッパの再エネ政策は頭打ちか?

日本と同じく製造業が強く、しかも電気料金が高い国にドイツがあります。一見、高い電気料金でうまくやっているようですが、ドイツの輸出産業向けの電気料金は一般的な電気料金とはまったく違う料金体系が採用されています。再エネ賦課金などの免除があり、実際には他国と遜色ない安い電気料金となっているのです。これはドイツ政府が、電気料金が産業に与える影響をよく理解していることにほかなりません。

この安くした電気料金の差額は残りの人々が負担することになります。再生可能エネルギーを押し進めているドイツでは年々その負担が重くなり、国民の間でも不満の声があがるようになりました。そのため2014年には固定価格買取制度を原則廃止し、今年になって入札制度を導入して電気料金抑制に動いています。

こうした政策のためドイツ国内での太陽光発電は頭打ちで、代わって注目を集めているのが洋上風力発電です。発電効率が50%程度と比較的効率のいい再生可能エネルギーですが、ここにも問題があります。ドイツで洋上風力発電が可能な海は北部にしかありませんが、製造業の中心となる工業地帯は南部にあり、送電線もまだ整備されていません。

もともと再生可能エネルギーは非常に効率の悪い発電方法です。ドイツ国内における発電設備全体の50%は再エネの設備ですが、発電量では30%しかありません。設備があっても、いつでも発電できるわけではないのです。どうしてもコストアップを招くことになり、ドイツの電気料金が高いのはこのためです。また、ヨーロッパで最も電気料金が高いデンマークは発電量の50%が風力発電となっています。

いま、ヨーロッパにおいて再生可能エネルギーはどこも頭打ちとなっています。ほとんどの国で固定価格買取制度の廃止または抑制に動いており、世界の流れは必ずしも再エネ導入支援ではないのです。現在、太陽光発電の3大国は中国・日本・アメリカですが、中国やアメリカには太陽光関連のメーカーや事業が存在します。日本だけが自国の経済にメリットを見出せていないのに太陽光を推進している状況です。

 
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