情報誌「TOMIC(とおみっく)」

47号 2013年1月発行(2/4)

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エネルギーが支える明日の社会のために TOMIC 日本経済の再生に果たすエネルギーの役割〜原子力再稼働に向けて〜

原子力をゼロとした場合の代替エネルギーへの不安

原発ゼロシナリオ2030年の電源構成<グラフ-1>

原子力ゼロを目指すためには、原子力発電で賄っている分を他の電源で補う必要がありますが、ここに重大な問題があります。革新的エネルギー・環境戦略では、2030年において総電力量の35%を、再生可能エネルギーで賄うことになっていて、残りの65%が火力発電となります。再生可能エネルギーのうちの水力を除く約23%が太陽光発電や風力発電等です。2010年段階での電源構成をみると、原子力は26%、火力が63%、水力が8%、太陽光・風力等に至っては2%程度です。原子力を無くした分を他で補うために、火力発電を増やし、太陽光・風力発電等を23%程度まで急拡大する、という構想なのです〈グラフ-@〉。このシナリオの実現はそう容易くはありません。

石炭はCOなどの環境問題があるので、火力を増やす場合は天然ガスに頼ることになります。これがまず一つ目の問題です。わが国は、天然ガスを液化してタンカーで輸入しています。もし海上封鎖等で輸入が途絶えたら日本は20日位しか持たないのです。これまで天然ガスはマレーシア、インドネシア、オーストラリアなどから輸入していましたが、インドネシアの輸出量の減少や需要の増加で、今後、カタールやロシアからの輸入が拡大していくでしょう。私が子どもの頃、日本は石油依存でした。政情不安定な中東依存をやめようと、原子力や天然ガスを増やしてきた訳ですが、今後、天然ガス依存度をあまり大きくすると、再び中東等への依存が増えることになります。時代に逆行していると言えます。

写真:山名 元氏

エネルギーを中東やロシア等政情不安定な国に依存し続けられますか?ということが問われているのです。原子力エネルギーを持つことは、他国に依存せず日本の独立性を保つうえで大切なことです。これをゼロに戻すというのは、国際政治学的にもリスクの高い話になります。

また今世界中でガスの需要が増えており、ガスの価格が上がる可能性もあります。万一取り合いになったとき、ガス以外のカードを持たなければ、価格的にさらに厳しい立場に立たされることも考えられます。

二つ目の問題は、太陽光発電や風力発電等を、総電力量の23%まで20年程度で増やせるかということです。太陽光や風力は天気に依存するため、需要に対する供給の保証ができないうえ、出力が変動します。需要に合った供給を可能にするには、需要の変動を予測して、変動分はバックアップ電源として火力発電でカバーする必要があります。再生可能エネルギーを増やすには火力の充実も必要不可欠で、そのための投資が必要となり、コストも上がります。

また、太陽光や風力等の不安定な電源が沢山入ってくるとなると、送電線の増強等電力系統の安定性を保つことも必要です。こういった追加的な設備に数十兆円規模の大きな投資が必要となります。

これらのコストを全て合わせると、電気代は4〜5割は上がり、2030年代には最悪で2倍になるという見積もりもあります。この負担は、一般家庭にもかかってきます。

 
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