情報誌「TOMIC(とおみっく)」

46号 2012年10月発行(1/4)

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澤 昭裕氏が語る「いま、なにを議論すべきなのか?」-エネルギー政策と温暖化政策の再検討-

澤 昭裕氏

澤 昭裕氏

略歴
1981年一橋大学経済学部卒業後、通商産業省入省。
1987年行政学修士(プリンストン大学)。工業技術院人事課長。環境政策課長、資源エネルギー庁資源燃料部政策課長を歴任。
2004〜2008年東京大学先端科学技術研究センター教授。
2007年から21世紀政策研究所研究主幹、2011年から国際環境経済研究所所長。東日本大震災後、エネルギー政策や温暖化政策の在り方等について、テレビ番組出演や雑誌への寄稿等を多数行っている。


澤 昭裕氏

九州エネルギー問題懇話会では、2012年6月5日に21世紀政策研究所研究主幹の澤 昭裕氏を招き、「いま、なにを議論すべきなのか?」−エネルギー政策と温暖化政策の再検討−と題する講演会を開催しました。
今回は、この講演内容について、ご紹介いたします。

 

エネルギー政策3つのバランス(量の安定供給の確保、経済性、環境性)
再生可能エネルギーへの過剰な期待
今もっとも重要なのは3〜5年先のエネルギー政策
再生可能エネルギー固定価格買取制度、先行するドイツでは、制度の見直しも
原子力発電の再稼働問題(火力発電への代替コストは年間約3兆円)
TOPICS 地球温暖化対策のため この秋から石油石炭税が増税に

エネルギー政策3つのバランス(量の安定供給の確保、経済性、環境性)

これまで日本のエネルギー政策には、3つのターニングポイントがありました。

一つは、1973年の第一次オイルショックです。この当時、電気の4分の3は石油で作られていました。中東の紛争によって日本に石油が入ってこなくなるかもしれないと、日本全体がパニックとなり、石油以外の資源を確保しないと、日本のエネルギー政策は危ないという意識が官民に芽生えたわけです。その結果、電力会社は、原子力発電を加速させるとともに天然ガスを増やしていきました。その後、第二次オイルショックが起こり、80年代にチェルノブイリ事故があったにもかかわらず、官民一体となって原子力を進めてきました。

二つ目は、1990年代後半、量が確保でき、電源にもバラエティーが出てくると、次はやはり経済性が求められてきます。日本の電気料金は国際的に見て高いという批判が強まり、発送電分離や電力自由化が課題となってきました。

三つ目の転機は1997年です。地球温暖化問題への対応が世界的な課題となり、この年に「京都議定書」がサインされました。ここから先は、環境に優しい、CO2(二酸化炭素)を出さない電気が望まれるという状況になってきました。

このように「量の安定供給の確保」、「経済性」、「環境性」という3つのバランスを取りながらエネルギー政策を進める中で、原子力が発電電力量の3割程度を占めるようになりました。

日本の発電電力量の推移

 
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